読書生活、幾度目か

引っ越して、久しぶりに電車に毎日乗るようになった。住んでいるところから職場までは下り電車なので、のどかなものである。コーヒーを持ち込み、最初のうちはぼんやり毎日音楽を聞いて通勤していた。本を読めばいいということに気づくまで一週間ぐらいかかった。習慣的に読むようになるまで、さらに一週間。すっかり移動中に読むくせがなくなっていてびっくりした。

朝から本を読むというのは、朝からゆっくり聞きたい人の話を聞く、ということに近い。時間は限られているが、嫌いなら読まなければいいし割り込みで仕事が入って遮られることもない。するすると頭に言葉が入るのは快感ですらある。

割と読むのは早い方なのだが、ショーペンハウアーの『幸福について 人生論』は読み始めて一週間は経つがまだ1/5程である。読み応えがあるし、朝から風刺のきいた筆致で何が幸福かを語られるのは結構面白い。くたびれた帰りの脳には向かないけれど…。

電子書籍も考えてみたが、携帯端末の電池の減りや目へのダメージ、そして本の手触りを考えると、やっぱり文庫か新書かな、というところに落ち着いた。コーヒーは相変わらず持っているから、ハードカバーは読むのに苦しいし持ち歩くには少し重い。若い頃は荷物の重さに頓着せずに借りては読む生活を送っていたが、今はどちらかというと身軽さを取るようになった。月日がたったのだな、と思い楽しくなった。