4週28日の入院を振り返ってみる(~4日目)

※色々とアレなのでご飯中に読むのはお勧めしません。

ごはんのこと
検査に泣いた2日目、無事痛み止めが処方された。とりあえず飲み始めるものの、まだまだ寝返りをうとうとするとかなり痛い。腰を持ち上げるなどもってのほかだった。
当然ベッドからは降りられず、ご飯もベッド柵にテーブル板を渡してもらって取ることになる。
何かと「まずいでしょう」と心配された入院食だったが、特養が併設されているからかご飯はかなり美味しかったように思う。少なくとも自分で作って食べるより品数はあるし、メニューも週に1度は麺類と丼物が出る、3日分の昼食は2種類から選択できるなど、かなり工夫されていた。

おしものこと
食に関しては大変幸せだったのだが、出す方は対応に苦慮した。
まず、2日目の時点でもう腰を上げて尿器を当ててもらうのも困難なレベルで痛んでいた。日勤の看護師さんに相談し、バルーンカテーテル+オムツの合わせ技で行くことになった。少しでも腰をあげることが少ないよう、という配慮である。
カテーテルは若干変な感じがしたものの、痛み止めを飲み始めるのに合わせて違和感が薄れた。オムツは、変な感想だが、大変暖かかった。普段はたいへんな冷え性で、すぐつま先の冷えに悩まされるのだが、オムツ生活中はぽっかぽか。つま先の冷え?なにそれ、むしろ暑いんですけど、という勢いであった。後日やってきた母にそう言ったところ、父方の祖母も同じ感想を述べていたらしい。とりあえず、腰回りを暖かくせんといかんのだなあ、ということを身に染みて理解したのだった。

おふろと着替えと白いアンチクショウ
当然風呂にも入れないが、毎日陰部はベッド上で陰部洗浄してくれるし、2日に1回ぐらいは身体を拭いてもらえる。
入院4日目の水曜日、初めて体を拭いてもらえることになった。入院した晩に借りた検査用の浴衣もどきを来たままだった私のところにも看護師さんがやってくる。
「タニモトさん、体拭きましょうか。タオルとお着替えありますか?」
父が持ってきてくれたのがテレビ台の下のカバンに入っていると思うのですが、とお願いして探してもらうことになった。お父さん持ってきてくれたの?ええ、母が詰めてくれたのを運んでくれました、なんて会話をしているうちに、
「あ、これかな…着替えの袋…」
目元の涼やかな看護師さん(美人)がごそごそと探し当ててくれた袋は、確かに下着やら色々入っているようだった。しかし。
「タオルあったのでお借りしますね。で、着替えはこれとー……あれ…んん…?」
なんだか困っているようなので何か足りませんか、と声をかけてみる。
「あのですねー、下が見つからないんですよねー……」
これはちがう、これか?ちがうなー、なんて彼女が出してくれるのは確かにどれもタンクトップやTシャツなど、薄手のトップスばかりである。ひと通り探し終えた彼女がのたまったことに、
「これは…お母さん、パンいちでいろってことかな??」
ちょwおまwww
思わず吹いた。そして吹いた勢いで身体に力が入り、折れている所に激痛が走って泣いた。頑張って笑いを噛み殺そうとしたところに中堅の眼鏡の看護師さん(美人)がやってくる。
「どうしたのー?」
「着替えが上から見つからなくて…パンいち疑惑ですー」
「あ、そりゃ確信犯だね」
確信犯で娘をパンいちに追い込むとか意味が分からないよ!ツッコミあぐねて笑いをかみ殺していると、担当してくれていた目元涼やか美人が
「とりあえずパジャマご用意しますね。検査着が上下分かれてるのかどっちがいいですか?」
と尋ねられたので、また今度着替えるときのことを考えて検査着をお願いする。と、眼鏡美人が、
「…タニモトさん、今日頭洗おっか…ってかお風呂はいろっか?」
とおもむろに声をかけてきた。理由はわかっている。髪の毛がもっしゃもしゃ+白いものが浮いていたからだ。少し前から脂漏性湿疹という頭皮が赤みを帯びて痒くなり、患部に白い皮膚の層のようなものが出来る皮膚炎にかかっていた。かゆいのでかいてしまうと、どうしてもその層が剥がれて汚らしい状態になってしまう。入院来4日、やっぱり気になるので時々かいてしまっていたからそのせいだろう。
入れていただけるのなら、お願いします、と返答した。
「じゃーちょっと夕方近くなっちゃうけど、また呼びに来るねー」
と眼鏡美人は去っていった。
「じゃあ着替えも後にしましょうか」
と、脱ぎかけていた諸々をもとに戻してくれる目元涼やか美人。一度お湯につけてしまったタオルを絞ったところで、彼女がまた笑い出した。
「す、すみません…これ…!」
バケツに手を入れた彼女が手にしていたものはタオルじゃなかった。白いタオル地っぽい、ハラマキだった。
ハラマキじゃ身体は拭けない。いや拭けるかもしれないけど…。普通にタオルも入ってたのに、なぜピンポイントで1枚しか入ってなかったそれを引いた…!
再び笑いを噛み殺す私と対照的に笑いながら謝り倒してくれた彼女は、とりあえずテレビ台の横にハラマキを干して去っていった。

体験・寝たきりリフトバス
予告通り16時頃に眼鏡美人が迎えに来た。ベッドまるごと移動して5階に上がる。
「あたしも見たことないんだけど、なんかジャグジーらしいんだよねー」
風呂大好き人間としては大変に心が踊った。
が、その前に恐怖の時間が待っていた。ベッド移乗である。2日目、検査時に散々悲鳴を上げたのは記憶に新しい。なんとか運んでもらうのに楽な姿勢を取ろうとするが時間切れでグイッと持ち上げられてそうっと降ろされた。痛かったけども、痛み止めのおかげが検査日よりはずっとマシ。

で、入ったお風呂はすごかった…!商品のページを見つけたので貼っておく→こんなの

身長160cm程度の大人一人が足を伸ばせる浴槽がある。その上部すれすれのところにレールがある。レールは浴槽の短い方の辺を横切って、外に伸びている。で、そのレールの端にベッドを差し込むとベッドが浴槽の上に移動する。まあここまでは写真を見てもらっても想像できるかもしれない。しかしレールにのってあっさりベッドが移動する技術すごい。
しかし一番驚いたのは入浴の瞬間だった。、スイッチを押すとベッドが沈む…のではなく浴槽が上がってきた!普段「湯に浸かる」というと自分から浸かりに行く感じだったので、こっちか…!と相当驚いた。そして噂通りのジャグジー
湯に浸かる前に身体も頭もしっかり洗ってもらってすっかり骨抜きリフレッシュした私は、戻りの移乗を半分寝返りを打った状態でよじのぼるという荒業を成し遂げ、眼鏡美人と介助にあたってくれた助手さんをたいそう驚かせた。多分、風呂に入って筋肉が温まったのが良かったのだと思う。温め大事。

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とりあえず風呂に入れてもらうことで割とすっきりしたが、実はこの頃から便秘に悩まされていた。それが週末にかけて涙目な自体を招くことになる。そしてその時救ってくれたのは。「パンいち?」発言をしてくれた目元美人だった。
ちなみに、信じられないことだが、母は確信犯だった。
「どうせ動けんからカテーテルやし浴衣借りると思って」
とのことだった。
「来週ぐらい行けそうやけどなんかいるもんある?」
と訪ねてきた母に頼むからパジャマ持ってきてとお願いしたのは言うまでもない。

(つづく)