好き嫌いを超える

いつもの蕎麦屋で舌鼓を打ったあと、会計に立った友人が
「…かりんとう、好き?」
と聞いてきた。レジ横にあった自家製桜かりんとうが気になったらしい。

店を出て、酔っ払いながら桜かりんとうをつまむ。よく売っている太いかりんとうではなくて、ここのはうどんぐらいの太さ。砂糖のコーティングも薄めで、かりんとうにしては軽いところがいい。

「実は俺かりんとうあんまり好きじゃないんだよねー」

ぱくぱくつまみながら友人がぽつりと漏らした。思わず、え、何で買ったの、と尋ねたところ、

「おいしそうだった」

といたくシンプルな答えがかえってきた。

好きじゃなくてその勢いか。とツッコミをいた入れたくなるほどの食べっぷりであった。

結局、好きも嫌いも自分の感性である。感じたものを自分で打ち破ってみないことには新たなものには出会えないんだなあと妙に納得した。

それにしても、かりんとう好きじゃないとかウソだろ、君。