鎌倉ひとりぶらり旅(2)

(前回までのあらすじ:鎌倉についたものの原画展の会場を見つけられず町をさまよう私。しかしさまよう中で万年筆とランチでしっかりにんまりしたのであった)

筍さんを出て、当初の予定通りとりあえず駅に戻ることにしました。踏み切りにぶつかったら、右折。けっこうな日差しですが、今日はカメラを持ってきたので日傘はありません。じりじりと額が焼けるのを感じつつ、吉祥寺に置いてあったDMを取り出します。開催しているギャラリーはどうやら駅を出てほぼまっすぐの位置にあり、ちょっと曲がるのが早すぎたようです。確認せぬままうろ覚えで歩き始めたのが決定的な敗因ですが、まあ、おいしかったしいいよね~、と交差点を紀伊国屋側へ渡りギャラリーヨコへ向かいます。

ギャラリーヨコは、故横山隆一先生がアトリエ・書庫として使われていた建物を改築したスペースなのだそうです。寡聞にして先生を知らなかったのですが、ギャラリーヨコのサイトにある元気よくキュートな作品に一目ぼれしてしまいました。そのうち高知まで行かなければ。また、先生のお顔の福々しさもひそかに素敵だなあ、と思ったり…やっぱり人生顔に出ますからね!

そんなこんなで割とさっくりギャラリーを見つけていざ「オチビサン展」に突入。

…そして度肝を抜かれました…。

謎の技法「ポショワール」。元々は金属板を型抜きして刷毛で彩色する手法ですが、安野先生流の作業工程は平たく言うとステンシルをものすごく細かくして版画のように多色刷りをしている状態。美しいグラデーションの秘密はステンシル用インクの押し付けの強弱とのこと。工程の細かさと、原稿の色の出方に心が震えます。美しすぎる!
美人画報』を書いていらした頃、よく職人さんの手仕事カッコイイ…といった趣旨の発言をされていたように思いますが、既にこのお仕事がカッコイイです、安野先生…。

すっかりやられてしっかりグッズも買って、ちょっとこの衝撃を冷まさねば、とプールのあるお庭に目をやると、お隣がカフェのようでテラス席でゆっくりされている方々が目に入りました。コレはすばらしい、と回り込むと、素敵な平屋建ての建屋に踊っていたロゴはなんとスターバックスコーヒー。あらま、と思いつつホットのカフェラテをオーダーして予定通りテラスに陣取ります。

スターバックスのテラス席は基本的に喫煙者の方が多い印象がありますが、ここはついついみんな出てきてしまうといった体で非喫煙の方がかなり多い印象でした。気候も、真夏を過ぎて日陰であれば過ごせる程度になっていたのも誘われる要因だったかもしれません。

テラスの建物側に椅子とテーブル席が、横山先生のお庭に面する側に筵と座布団が用意されていました。入れかわり立ちかわり、人がやってきてはお庭を眺めながらゆっくりおしゃべりしていきます。私もひとりながら、ついゆっくり、ぼんやり過ごしてしまいました。

このままもう少しここでまったりしていこうか、とも思いましたが、電車の中で決めたプランも魅力的。がんばって歩きましょう、と意を決して席を立ちます。目指すは切り通しと水琴窟!

(つづく)