実録・知らないお婆ちゃんに「携帯が壊れちゃったの」と言われた時の対処法

(承前)
「蓋も確かここに入れてあったのだけれど…電池を替えたばかりなのに充電できなくって…壊れちゃったのねぇ…」
と、カバンの中を引っくり返して大捜索が始まった。ノートとペンが入ったポーチ、現金の入ったポーチ、充電セットの入ったポーチと、ポーチが小山になって膝から滑り落ちそうな勢いである。お財布がわりに100均の半透明ファスナーポーチを使うのはかさばらなくていいなあ…と思いつつのんびり待つ。
果たして充電器入れとなっていたポーチから無事発掘された。細かい部品なんてなくしがちなのにしっかりとってらっしゃった。

まずは蓋をなおす。ゴムの爪も折れていないので、ちょっと引っ張られて外れてしまっただけのようだった。差し込んで修理完了。
「あらあらあらあら」
いい反応ありがとうございます☆これで蓋は大丈夫ですよー。

続いて携帯用電池交換式充電器を挿してみる。
「電池は替えたんですけどねえ…壊れちゃってたからもうダメかしら…」
いえいえ、電源が入らないのと電池の蓋はあんまり関係ないんです、実は。
教訓:関係のない物理的故障だけをみて「壊れた」と主張されることがあるので、必ず現物を確認させてもらうこと。

抜き挿ししたところ、どうも充電器側のコードを触ると充電しなくなる。断線しかかっているのかもしれない。
「私のやり方がダメだったのかしら…もうね、今78だからあと2年はなんとか生きたいと思っているんだけど」
えっ、60代かと思ってたよ~。いやあ、御年78でそれだけしっかりしてらっしゃったら十分ですよ!大丈夫大丈夫!
ポイント:自分を責める方向に向かいそうな時は即軌道修正してはげます。特に同じことをずーっと気にするタイプの方の場合、ずーっと「ダメな私」の話になってしまい辛くなりかねないので。

ちょっとコードがダメになりかけているので、とりあえずそーっと持ち運んで、もしランプが消えたらちょっとコードを押したり引っ張ったりしてみてください。あと、できればおウチから充電器を持ってきた方がいいかも。
「あらー、コード?動かしちゃダメ?カバンの中にいれちゃダメよね?」
あー、そーっと運べば、大丈夫だと思いますよ!
「そうですか…お忙しいのにごめんなさいね、本当に助かりました。ありがとうございます」
いえいえ。早く退院できるといいですね!もうすぐギブスははずれるんですか?
「それがまだリハビリも決まっていなくて…私ね、家で掃除してたんだけれど、何かコードに足を取られたのかふーっと後ろに倒れてしまってね、(以下説明が続くが略)
教訓:うっかり病状を聞くのは命取り。

お話が5分とも10分とも思えてきた。冷んやりした廊下で再び尿意も極まり気味だが、おばあちゃんの話は止まらない。看護師さん達は華麗にスルーを決め込んでいるし中座のタイミングが見つからず涙目になりかけたところで、

「お話のところすみません…」

松葉杖を抱えた救世主(イケメン眼鏡理学療法士)キターーー!

Mさんごめんー!トイレ行ってくるから3分ほど待ってて!叫んで再び車椅子をぶっ飛ばす私。
「携帯がね、昨日の晩壊れちゃったんですけど…」
Mさんに経緯を語り出すお婆ちゃん。あ、そうなの?といつもの聞いてるんだか聞いてないんだかよく判らない陽気さで応じるMさん。助かった…!と思いながら、車椅子トイレのアコーディオンカーテンを閉める私。めでたしめでたし。



まあとりあえず同室のおばあちゃん達みてても「携帯が壊れた」の8割がたは充電失敗なのでちょいと見てあげるといいと思います。
同じ話を何度もされてもイライラしない!とにかく相槌を打つ!
ものさえ見せてもらえればこっちのものです。

あとは長話の餌食にならないように健闘を祈る。