4週28日の入院を振り返ってみる(~13日目)

母来る
とうとう母がやってきた。水曜日だったから、11日目のことである。前週に来たかったけれど、実家の近所に住む父方の祖母が骨折していてその面倒をみていたから無理だったとのこと。祖母の世話を叔父の家と交代して、こちらに来てくれたそうだ。
諸々整理して、タオル類などを洗濯するべく私の部屋へと帰っていった。そう、父に
「お前、泥棒入ったかと思ったで」
と言わしめた、私の部屋へ…。
しかしそこは母である。その日から奮起し、室内はもちろん冷蔵庫までぴっかぴかに磨き上げ整頓してくれた。
この話を見舞いに来てくれた職場の人達に話した所、「男親は役に立たないからね…」と男女問わずコメントをもらうに至った。ちょっと世のお父さん方が気の毒な気がしなくもないし今回衣類を運んできてくれた父にはかなり感謝しているけれど、うん…なんかわかる…。

母は毎日、朝は洗濯、買物。昼過ぎに来てくれ、17時頃の送迎バスで帰っていく。なかなか長じてからゆっくり話す時間はなかったから、今回こういう機会にでも持てて本当に良かったと思う。父方の家系についても話ができたりして面白かった。
我が家にはテレビもラジオも無いので、帰っていった後はひたすら本を読んでいたようだ。ちょっと申し訳ないことをしたと思う。

暇にあかせてヘルプセンタ
そんな安定した容態が徐々に知れ渡ったのか、現地作業中の同僚から時折電話が入るようになった。
「タニモトさん、Sleepってどう書くんだっけ~」
「書いてみたけど効かないよ~」
「○○の資料あったら送って~」
普段だったら「自分で調べてよう!」と返すところだけれども、動けない穴を埋めてもらっている以上、それぐらいはお安い御用である。

さくさく調べて返信していたが、ある朝今度はナイスミドルから電話がかかってきた。PC2台に対し、モニタ2台をどちらでも映せるようにしたいとのこと。その時の頼み方がひどかった。
「お前、どうせ暇だろ?」
確かに暇だ!しかし、人は事実を指摘された時ほど腹が立つものだということを、覚えておいたほうがいいよ…。
結局、切替器をいくつか使うことで運用可能であると返答した。その後も何度か問い合わせがあり、私のベッド上はiPod Touchの他Let'sNoteがあり電源ケーブルが延長され、と、なんだかひどい様相になっていった。でも逆に考えれば環境と頭と口さえあれば、ベッドから動けなくてもヘルプセンター業務はできそうだ。病院に長期にわたり入院せざるを得ない人たちの労働のヒントにならないかな、と思う。
ちなみに、私の怒りが何かに通じたのかナイスミドルが使っていたPCのうち、1台がその後壊れたらしい。折角切替器買ったのに!と涙目になっていたがそんなことは預かり知らぬことである。合掌。

リハビリ開始
ずいぶん腰も上がるようになり寝返りもスムーズに打てるようになった金曜の午後、母とお喋りをしていると、黒フレーム眼鏡をかけたお兄ちゃんがやってきた。Mさんというそうで、
「今日からリハビリの指示出てるんで、とりあえず今日はベッド上でできることだけやらせてくださいー」
とのこと。でもまあ確かにベッド上でも身体は動くね、と納得しながら、初期チェックのような柔軟体操のような動作を指示される。
が。できない。できないのである。足を伸ばした長座位の姿勢で、つま先に手が届かない。あれ…と不思議そうな顔をするMさんに
「すみません…身体、超固いんっす…」
と恥を偲んで申告する。事故の影響でも何でもなく、コレが俺のデフォルト…!身体の柔軟性なんていらないと思ってたけど、こうやって改めて測るとなると若さの割に硬すぎるのでちょっと恥ずかしいぞ…。
Mさんはさすがプロだからか、
「あ、そうなんですね☆」
と軽く流してくれたが、横で見ていた母は私のヘタレぶりに大爆笑していた。ひどい。
恥を晒した後はぐいぐいと足裏マッサージを受ける。筋肉を解しておく目的だそうだが、単純に気持ちよく大変幸せな気分で受けてしまう。次は月曜日、ということで最初のリハビリは終了。

正直、リハビリというとリハビリ室に行ってトレーニング、というイメージがあったのでちょっと驚いた初日であった。本当は寝たきりの人にも必要なんだよなー。目から鱗な金曜日であった。

(つづく)